福王山の天狗と吊るされた炭焼き
どんな伝承か
福王山は大部分が国有林で、枯れ木の始末などに当たる樵が山に住み込んでいた。樵たちは皆天狗の実在を信じ、その助けで暮らしていたという。里へ買い物に下りる暇がないと、天狗が里へ行くが欲しい物はないかと声をかけてくれ、豆腐や油揚げを頼むと驚くほど早く戻り、湯気の立つ饅頭をもらったこともあったという。また、ある炭焼きは、山には天狗が残した餅やそば粉があると言って何も持たずに山へ入るようになった。一年ほど続いたが、予定の日に戻らないので山狩りをすると、谷の上空に峰から峰へ渡した藤蔓の中ほどに、死体となって吊られていた。天狗に近づきすぎて叱られたのだとされる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 1 河童・天狗・神かくし(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 1 河童・天狗・神かくし』は、松谷みよ子が編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞書で全国から寄せられた話と、郷土誌や雑誌『旅と伝説』などからの引用を、県別に話者・回答者・出典を添えて並べ、奄美・沖縄のケンムンやブナガヤにも及ぶ。目次では河童・天狗・神かくしの三章の頭にそれぞれ「考」を置き、巻末に河童の名称、天狗・神かくし年表、あとがきを掲げる。