風呂桶に隠れて見た食わず女房の正体
どんな伝承か
欲の深い爺と婆が、食い物を食わない嫁がよいと言って、飯を食わずによく働く嫁をもらった。あまりに不思議なので、婆は台所の大きな風呂桶に隠れて様子をうかがった。嫁は五升も六升も入る大鍋に小豆の粥を煮て、煮えると頭のてっぺんが真ん中からぱかりと割れ、大きな舌を出して恐ろしい形相となり、鍋ごと口にすくい込んだ。震える婆に気づいた鬼婆は、婆を桶ごと肩に載せて山へ運んで行った。婆は途中の藤蔓につかまって抜け出し、命からがら家へ逃げ帰る。追ってきた鬼に、いり損ないの豆を掴んで「鬼は外」と投げつけた。それが豆まきの始まりだという。
原典より
欲のふけえじい、ばあがいてねえ、息子に嫁を貰いたいけど、食いものを食わないような嫁がいいと言うので、仲々そういう嫁が見付からないっつうんでいたら、たまたま、そういう食わねえで、一生懸命仕事をする嫁がいるからつうんで、そう…—— 富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史)
『富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話』は、富岡市が編んだ市史の民俗編のうち、民俗知識の章の末尾と口頭伝承の章を収めたものである。口頭伝承の章は、昭和四十年代以降の中学校郷土部の採話や額部地区の民俗調査、市史編さんの調査で聞き取った昔話・伝説・世間話と、富岡・甘楽方言の解説から成る。伝説は自然的・社会的・信仰的の三つに分け、羊太夫や小野小町、貫前神社にまつわる話と多くの地名起源を載せる。