狸が教えた菖蒲湯で下した蛇の子
どんな伝承か
昔、ある家に十六、七の美しい娘がいて、姫のように大切に育てられていた。ある晩、人が寝静まったころ、見たこともないほど美しい若い衆が忍んで来た。娘は夢中になり、若い衆は毎晩通ったが、家の者が気づきはじめるとぱたりと来なくなった。やがて娘の顔は日ごとに青ざめ、体の具合がおかしくなる。そこへ一匹の狸が家の外を通りながら、菖蒲湯を立ててその風呂に入れば魔物の子が下ると言った。そのとおりにすると、娘は蛇の子をたくさん下した。あの若い衆は蛇が化けて通って来ていたのである。このときから魔除けに屋根へ菖蒲を三か所さすようになったという。
原典より
昔、或る家に十六、七才のきれいな娘がいた。—— 富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史)
『富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話』は、富岡市が編んだ市史の民俗編のうち、民俗知識の章の末尾と口頭伝承の章を収めたものである。口頭伝承の章は、昭和四十年代以降の中学校郷土部の採話や額部地区の民俗調査、市史編さんの調査で聞き取った昔話・伝説・世間話と、富岡・甘楽方言の解説から成る。伝説は自然的・社会的・信仰的の三つに分け、羊太夫や小野小町、貫前神社にまつわる話と多くの地名起源を載せる。