蛸の化身と契り蛸を産んだ娘
どんな伝承か
相馬の折笠の娘フジは、海に出て働けば男以上といわれる働き者で、しかも美しかったので、どこの家でも嫁にほしいと思っていた。名主の息子からも申し込みがあったが、フジは首を横に振るばかりであった。その頃、フジのもとへ晩になると美男の小姓が通ってくるようになり、フジはこの小姓と契りをもった。おまえはどこから来るのかと尋ねても、小姓はなぜか笑って答えなかった。やがてフジは身重となり、赤児を産んだが、ぽとり、ぽとり、ぽとりと落ちたのは蛸が三匹であった。小姓はフジの美しさに惹かれた蛸の化身だったのである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。