一本足の蛸
どんな伝承か
ある時、安房郡富崎村大字布良の磯辺に、大きな蛸が引き潮に取り残されていた。土地の漁師の男に見つかった蛸は岩穴へ隠れたが、穴は体を隠しきれる大きさではなかった。男はその日、蛸の太い足を一本ちょん切り、蛸が出られないように穴を塞いで帰った。食べると大層うまいので、翌日も翌々日も一本ずつ切りに通い、一週間で七本を食った。八日目、最後の一本を切ろうと穴を覗いていると、急に潮が差してきた。潮につかって力を取り戻した蛸は、残る一本の足で漁師の喉に巻きつき、海中へ引き込んだ。男は二度と陸へ戻らなかった。それから土地では、布良の漁師が蛸の足を食って死んだ、蛸は恐いものだ、という歌が歌われるようになったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説叢書 安房の巻(藤沢衛彦・日本伝説叢書・江戸~明治時代)
藤沢衛彦編『日本伝説叢書 安房の巻』を全186話・伝説(1見出し=1話)単位で収録(緒言・序・名義・解説・和歌・注は除外/内包)。所在地(郡村区・社寺)を付して集成。