あかとりを貸して沈められかけた舟
どんな伝承か
大堀に伝わる話である。昔、盆の夜に手操網へ出た舟があった。にわかに時化がひどくなり急いで戻ろうとすると、いつのまにか万灯を飾った大船がすぐ横に付いており、美しい声であかとりを貸してくれとしつこく求めてくる。恐ろしくなった漁師は、一つしかないぞと言い添えて投げ渡した。すると相手は音も立てずに、そのあかとりでこちらの舟へ次々と水を入れ始めた。舟は水浸しになりながらどうにか港へ帰り着いたが、乗っていた者はみな魂の抜けたようにぐったりしていたという。以後この浦では盆に漁へ出ず、沖であかとりを貸さないと互いに戒めた。
原典より
昔、盆の夜に手操網に出た舟があった。—— 房総の伝説(平野馨) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
房総の伝説(平野馨)
『房総の伝説』は、平野馨が安房・上総・下総の旧三国、ほぼ今の千葉県に伝わる伝説を選んで編んだ資料集である。ホトトギスやワラビの由来、片葉の芦や頼朝の箸の杉、弘法の井戸、将門や八幡太郎の話、坂戸神社の人身御供、証誠寺の狸など、動植物・石・池・地名・家・祭りにまつわる伝説を市町村名を添えて記す。はしがきに示す自然伝説・歴史伝説・信仰伝説の三部に分け、解説や論評を加えずに書き連ね、似た話のある土地も併せて挙げる。