幼な子を抱く農夫を助けた鼻取地蔵
どんな伝承か
およそ六百年も前のこと、鹿島町の横手に五右衛門、重右衛門とも呼ばれる正直で働き者の農夫がいた。妻は子を残して先立ち、五右衛門は幼な子を背負って働いていた。五月の田植え時、一人では代掻きが進まず幼な子を抱えて途方に暮れていると、どこからか十四、五ほどの男の子が現れて馬の手綱を取り、代掻きを手伝ってくれた。おかげで四、五段を瞬く間に終え、田植えも無事にすむ。田植えが終わると子供は姿を消した。五右衛門はあの子は地蔵様に違いないと村人に語り、徳に報いようと堂を建てて鼻取地蔵とし、旧正月二十四日を縁日と定めて祭ったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本伝説大系 第3巻(日本伝説大系編集委員会・日本伝説大系(みずうみ書房))
『日本伝説大系 第3巻』は、山形・福島・新潟の三県に伝わる伝説を集めた叢書『日本伝説大系』の一巻である。湖水の干拓、鮭の大助、八百比丘尼、弥三郎婆、安達ヶ原の鬼婆、産女、雪女房、河童などの話のほか、松・杉・石・池・清水・温泉・長者にまつわる伝説を、口承資料を主に採っている。全体は「文化叙事伝説」と「自然説明伝説」に分かれ、各項目は例話と伝承地を掲げ、〔類話〕〔文献〕〔参考〕で近世以後の史料や県外の類例を補う。