針の糸でたどった岩屋の蛇の婿
どんな伝承か
昔、ある大尽の家に美しい一人娘がいた。どこからともなく、公家のように美しい若い衆が毎晩通って来るが、素性を明かさない。母親は大きな糸巻きの先に針をつけたものを娘に渡し、若い衆の着物の裾に刺しておけと教えた。翌朝、糸をたどって行くと山の中へ入り、川べりの岩屋から苦しげなうめき声がする。中では若い男が、針が刺さって命もおしまいだが人間の娘に子種を残したと言い、年とった母らしい声が、人間は菖蒲と蓬の湯に入れば子種も流れてしまうと答えていた。三人は蛇だったと知り、娘が菖蒲と蓬の湯に入ると蛇の子がみな下ったという。
原典より
昔々、あるお大尽の家で、とってもきれえな年頃の一人娘がいました。—— 富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話(富岡市(編)・富岡市史)
『富岡市史 民俗編――昔話・伝説・世間話』は、富岡市が編んだ市史の民俗編のうち、民俗知識の章の末尾と口頭伝承の章を収めたものである。口頭伝承の章は、昭和四十年代以降の中学校郷土部の採話や額部地区の民俗調査、市史編さんの調査で聞き取った昔話・伝説・世間話と、富岡・甘楽方言の解説から成る。伝説は自然的・社会的・信仰的の三つに分け、羊太夫や小野小町、貫前神社にまつわる話と多くの地名起源を載せる。