黒糸を結ばれ正体を現した蛇の婿
どんな伝承か
むかし、蛇がよい息子に化けて、ある娘の家へ通ってきた。夜、寝ていると音もなく入ってきて、「わしはおまえが好きだ、どうしても嫁になってくれ」と口説く。思い余った娘が、毎晩音もなく出入りする若者のことを母に打ち明けると、母は「それなら蛇が化けているのかもしれない。黒糸をそっと隠して持ち、手か足に結びつけてやれ」と教えた。娘が言われたとおり若者の手に黒糸を結ぶと、若者はたちまち大きな蛇になり、障子の穴からするすると抜けていったという。
原典より
そうしたら、たちまち大きなへびになって、障子の穴から、スルスルスルスルと抜けていったって。—— 坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説
『坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説』は、天竜村坂部の民俗をまとめた民俗誌稿のうち、第十二章「口頭伝承」の一部を収めたものである。さるかに合戦、へび女房、桃太郎、花咲かじじいなどの昔話を語り手の名を添えて土地の語り口のまま記し、先途の七人塚、お万さま、天龍川のかわらんべ、早太郎のひひざる退治など落人や土地にまつわる伝説を並べる。昔話を動物昔話・本格昔話・笑話に分け、伝説、なぞと続ける。