虎も狼も逃げ出した古屋のもり
どんな伝承か
金をためることに一生けんめいな婆さんがいた。大雨の降る夜、馬を盗もうとする博労が忍び込み、婆さんを食おうとする虎や狼も入り込んだ。婆さんは欲は深くても気の悪い人ではなく、「今夜の雨はとらやおおかみより恐ろしい」と言いながら、雨漏りを受ける桶を持って走り回っていた。それを聞いた虎や狼は、自分たちよりもっと恐ろしい「モル」というものがいると思い込み、出ていけば食われると逃げ出した。博労は馬が逃げたと勘違いして飛び出していった。こうして婆さんは、虎にも狼にも遭わず、馬も盗まれずに無事だったという。
原典より
とらやおおかみもおばあさんを食わずと思ってへえってった。—— 坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説
『坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説』は、天竜村坂部の民俗をまとめた民俗誌稿のうち、第十二章「口頭伝承」の一部を収めたものである。さるかに合戦、へび女房、桃太郎、花咲かじじいなどの昔話を語り手の名を添えて土地の語り口のまま記し、先途の七人塚、お万さま、天龍川のかわらんべ、早太郎のひひざる退治など落人や土地にまつわる伝説を並べる。昔話を動物昔話・本格昔話・笑話に分け、伝説、なぞと続ける。