赤羽駅の長い階段と墓場ネの空耳
どんな伝承か
埼玉から京浜東北線で新宿へ出るとき、最大の難所は乗り換え駅の赤羽だと語る人がいる。下りては上り、また下りるあの階段は、思い出すだけで出かける気が失せると母親も言うほどだった。それでも都内の病院に入院している知人を見舞うため、七十歳の母を連れて出かけた。百数十段の階段は年寄りの身にはこたえたらしく、赤羽線に乗り換えたあとも息を切らしていたが、口だけは達者で、駅員の声が、ハカバネ、墓場ネ、お降りの方が死んでからお乗り下さい、と聞こえたと言ったという。
原典より
自分の所から二十里ほどの後藤野の話。—— 現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 ― 偽汽車(松谷みよ子・現代民話考(ちくま文庫)・2003年(平成15年))
『現代民話考――偽汽車』は、松谷みよ子が編んだ『現代民話考』全十二巻の第三巻で、二〇〇三年一月付の文庫版まえがきを持つ筑摩書房の文庫版である。鉄道開通のころ狸や狐が汽車に化けたという偽汽車の話、船幽霊や幽霊船など海の怪談、タクシーの幽霊など自動車や列車の怪談と笑い話を、全国の回答者の聞き書きや新聞・雑誌・書籍から集める。三章それぞれの冒頭に考を置き、話ごとに本文と分布を並べて地名・話者・出典を添える。