先途のお池の主と地すべりで消えた池
どんな伝承か
坂部の先途というところは、むかし三軒の家があり、平らのよい土地だった。そこに池があり、先途の娘が毎朝その池を鏡にして髪をすいていた。それを見ていた先途のお池の主は、どうしてもこの娘を嫁にしたいと思い、蛇の体を人の姿に変えて娘と愛し合うようになった。ところがひょんなことから二人は仲たがいし、怒った主は娘を池に引き込んでしまった。池は荒れて一面のナギ(地すべり)となり、池そのものが消えた。そのとき飛んだ石は峰山を越えて富山の大谷まで落ち、浅かった虫川はおそろしく深くなり、先途の三軒も流されて一軒だけになったという。
原典より
お池の主は怒って、この娘をお池に引っぱりこんだって。—— 坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説 より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説
『坂部民俗誌稿(長野県下伊那郡天竜村)――昔話・伝説』は、天竜村坂部の民俗をまとめた民俗誌稿のうち、第十二章「口頭伝承」の一部を収めたものである。さるかに合戦、へび女房、桃太郎、花咲かじじいなどの昔話を語り手の名を添えて土地の語り口のまま記し、先途の七人塚、お万さま、天龍川のかわらんべ、早太郎のひひざる退治など落人や土地にまつわる伝説を並べる。昔話を動物昔話・本格昔話・笑話に分け、伝説、なぞと続ける。