狼の獲物を役場に渡さなかった祖父
どんな伝承か
明治二十年代の話として語られる。狼が五、六頭で日暮れに獲物を追ってきて、その場で食い殺し、昼のあいだは近くの茅原にひそみ、夜になると下りてきて肉を食べていた。そこへ役場の職員が肉を取りにやって来た。話者の祖父は、狼の獲物は狼に食わせるものだ、自分は塩を持って行って要る分だけもらってきたのだ、お前たちが持って行ったら承知しないと言い張り、とうとう役場の者には持って行かせなかった。狼は三日ほどかけて、その獲物を残らず食べ尽くしていったらしいという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。