放送を続けて犠牲になった役場の女性
どんな伝承か
東北の消防団は結束力が強く、自分の命を顧みずに勇敢に救助へ向かうことで知られる。津波の到来を家族や周囲に報せたあと、お年寄りの救助に向かってそのまま犠牲になった者も少なくない。宮城県では、南三陸町の役場につとめる女性が、津波が押し寄せるなかで非常放送を続けたまま犠牲になったことがニュースになった。岩手県大槌町でも、津波到来の警報のため海沿いの半鐘を鳴らし続けて犠牲になった消防団員がいる。自分の命を顧みずに他人を助けるという尊い覚悟は、人々の心に深い印象を残したと著者は記している。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介)
『震災後の不思議な話-三陸の怪談』は、宇田川敬介が著した東日本大震災の被災地の怪異談集である。復興の手伝いで通った三陸の人々から聞いた虫の知らせや生死を分けた出来事、津波の犠牲者の霊、タクシーの幽霊などの話を、津波の言い伝えや『遠野物語』、オシラサマ伝説とあわせて記す。全体を「迫りくる危機と虫の知らせ」から「見守っています」までの四幕に分け、「おわりに」で取材の動機と、話者の名や地域を伏せた方針を述べる。