がれきの山に現れた顔のない女
どんな伝承か
町のはずれに山となって積み上がったがれきを、分類して整理する仕事をしていた男の話。あるとき、がれきの中からオルゴールが出てきて、開けると指輪が一つ入っていた。ゼンマイを巻くとショパンの「別れの曲」が鳴ったので、持ち主が見つかるかもしれないと「再生」と書いたコンテナへよけておいた。しばらくすると、見覚えのない女性が作業着姿で手際よくがれきを片づけている。声をかけると、指輪が出てきたからおそろいのネックレスも探さないといけない、彼とまた会えそうだから、と言う。もしやと問うと女は顔を向けたが、そこには目も鼻も口もほとんどなかった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
震災後の不思議な話-三陸の怪談(宇田川敬介)
『震災後の不思議な話-三陸の怪談』は、宇田川敬介が著した東日本大震災の被災地の怪異談集である。復興の手伝いで通った三陸の人々から聞いた虫の知らせや生死を分けた出来事、津波の犠牲者の霊、タクシーの幽霊などの話を、津波の言い伝えや『遠野物語』、オシラサマ伝説とあわせて記す。全体を「迫りくる危機と虫の知らせ」から「見守っています」までの四幕に分け、「おわりに」で取材の動機と、話者の名や地域を伏せた方針を述べる。