紀伊のクロンボウ(雷獣)
どんな伝承か
紀伊続風土記の産物の部に、木狗すなわちクロンボウという獣が載っている。本草でいう雷獣にあたるとされ、姿は小犬のようで体が細く尾が長い。全身黒く、喉の下から胸にかけて一筋の赤黄色があり、歯と爪は鋭く、飛ぶように走るのが速い。天気が曇り、風雨のときにはその勢いがいっそう増し、糞は麝香のように香るという。先年から高野山の奥や有田郡山保田庄の山中でときどき捕らえられており、日高・牟婁両郡の山中にもいるだろうと記される。柳田はクロンボウが山人の外称の一つでもあったことから、雷獣と山の神の関係を疑っている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
定本柳田国男集 第4巻(柳田国男・定本柳田国男集)
『定本柳田国男集 第4巻』は、柳田国男の著作を集めた定本の一巻である。岩手県遠野の伝承を佐々木鏡石から聞いて書いた「遠野物語」、山に入った人や神隠しを論じた「山の人生」、河童・ひだる神・一つ目小僧・天狗などを扱い妖怪名彙を付す「妖怪談義」を収める。ほかに「山人考」「史料としての傳説」「比丘尼石の話」「山人外傳資料」「『イタカ』及び『サンカ』」「山民の生活」など、山人・漂泊民・妖怪をめぐる論考を併せる。