信州松城に落ちて捕まった雷獣
どんな伝承か
安永年間、信州松城の武士の家に雷が落ち、獣が捕らえられた。大きさは猫ほどで、形もまた猫に似ている。毛は灰色で光沢があり、日中を過ぎると金のような黄赤色を帯びる。腹の毛は逆に生え、毛の先は岐に分かれていた。天が晴れれば終日首を垂れて眠るようにしているが、暗く風雨の日には恐るべき勢いを見せる。この獣は落ちたときに足を打ち傷めて昇騰することができず、それゆえ捕らえられたのだという。傷が癒えた後、土地の人はこれを放してやった。雷の落ちた所ではしばしばこの獣が見られると『越後名寄』は記している。
原典より
併し毛色は灰色で腹の毛は逆生し、毛の末がわかれてゐる。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。