伊勢平治の深田で死んだ六足の雷獣
どんな伝承か
『玄同放言』によると、元禄年間の夏、六月中旬に、越後国魚沼郡妻有の近くの伊勢平治という村で、観音堂のそばの深田にはまり込んで死んだ雷獣があった。袖の沢の豊与という者が十五歳のとき、観音参りの帰りに長徳寺で雨宿りをして、住職と一緒にこれを見たと伝えられている。六本の足を持ち、首は猪に似て長い牙があり、爪は水晶のように澄んで水かきがあった。色は焦茶色で、体の大きさは狐ほどであったという。
原典より
元祿年間夏六月中旬越後國魚沼郡妻有の近村伊勢平治なる、観音堂の邊の深田の中に陥りつ竟に斃れし雷獸ありけり。—— 動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
動物妖怪譚(日野巌・日野巌・動物妖怪譚・1926年(大正15年))
『動物妖怪譚』は、日野巌が大正六年に筆を起こし、大正十一年の跋と大正十五年の再記を添えて著した伝説の動物の研究書である。鬼・天狗・河童・人魚・雪女・龍・雷獣・狐・狸・獏・鯰・猫など二十六の項目を立て、記紀や万葉集から近世の随筆までの記事を原文の引用ごと示して起源と変遷をたどり、動物学の知識で正体を考える。總論で起原・歴史的変遷・分類などを論じ、結論では迷信から科学へ近づくことを説いて閉じる。