にゃんこと来た三歳の子と氏神のお告げ
どんな伝承か
大正八年五月二〇日すぎの真夜中のことだという。野川の奥のはしに奥のせんどという部落があり、谷川をはさんでこちらに一軒、向こうに一軒という寂しい所だった。浜渦作馬の家の障子がスーッと開き、見ると川向いに住む三歳の浜渦良水、通称貞に似た子がいる。どうして来たかと聞くと「にゃんこと来た」と言う。狸が化けたかと思いながら背負って川向いの家へ連れて行き、声をかけると両親が飛び起きた。夫婦の間に寝ていたはずの貞がいなくなっていたのである。谷川に橋はなく飛び石を渡らねばならず、翌日渡らせようとしても三歳の子には無理だった。たゆうさんに見てもらうと、化け猫が貞をばかして山へ連れて行くのを氏神様が見つけ、契約の親である作馬の所へ連れて来たとのお告げがあったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。