ニジマスに引きずられ鷹を食った猫
どんな伝承か
一九六三年ごろのある秋の夜、養魚場を経営する小椋茂が池の見廻りをしていると、親魚池で一匹の猫がすごい勢いで泳ぎ回っていた。泳ぐというより何ものかに引きずり回されるようで、ときどき水に沈む。あわててタモ網で掬い上げると、いつも魚を狙いに来る赤虎の猫で、五、六〇センチもある親魚に爪を立てたまま引きずり込まれ、ぶら下がって泳がされていたのだった。後日談がある。小椋が頼まれて飼っていた鷹が小屋を脱け出し、夜に帰ってきたところをこの赤虎が襲って食ってしまった。腹を立てた小椋が投げた石が当たり、猟をする猫は死んだ。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。