門司へ移った気性の荒い猫ハイド
どんな伝承か
昭和四〇年ごろ、父の転勤にともなって東京から門司へ連れて行った猫がいた。名はハイド。利口ではあるが気性が荒く、まるで二重人格のように豹変する。喉を鳴らして膝に乗ってきたかと思えば不意に手を噛み、甘えた声で近寄っては耳に食いつく。とりわけ、その日に悪口を言われたり、悪さを叱られて頭を叩かれたりすると仕返しは確実で、夜中に枕元の障子をよじ登って破り、寝ている者の顔もかまわず布団の上を走りまわった。家の者は夜が来るのを恐れ、頭から布団をかぶって眠ったという。生傷の絶えない暮らしだった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 10 狼・山犬、猫(松谷みよ子・現代民話考)
『現代民話考 10 狼・山犬、猫』は、松谷みよ子が日本民話の会の『民話の手帖』での呼びかけやアンケート、聞き書きで全国から集めた話を編んだ現代民話の資料集である。明治以降を目安に、狼への畏れと信仰、送り狼や千匹狼、化け猫や猫の踊り、戦中の猫の供出、水洗トイレを使う猫までを収める。序文と各章の前文に続いて「狼・山犬」「猫」の二章を主題別の節に分け、各話例の後に類話の採集地・話者・出典を「分布」として並べる。