水戸谷の夜道に張られた白い幕
どんな伝承か
本当にあった話として語られる。延利のばあさんが、山田に嫁いだ娘の家へ遊びに行き、泊まっていけと言われて泊まった。朝早く帰ろうと目を覚まし、夜明けと思って水戸谷をとことこ戻ったが、実はまだ夜中だった。道には白い幕がいっぱいに張られている。杖で払うと破れて道が見え、少し行くとまた幕が張られていて、何度払っても現れる。これは狸だと思い、わしは人から狸と言われる婆だ、お前らなど怖くないと怒鳴ると幕は消えた。向こうから汽車とも自動車ともつかない大きな灯が来たので、よけようとして転んだが、けがはなく、背中の風呂敷包みの中身がすっかりなくなっていたという。
原典より
手平の短歌の先生とこへ行ったとき遅なってしもうてのう、先生に送ってもろうたんやが、あっこらさぶしいとこでのう、ドブのはたにお地蔵さんがあったんえ、そのお地蔵さんの一寸向うにうどんて書いた赤いちょうちんがつっちゃあって、そ…—— 現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。