山小屋から見えた麓の火事の赤い光
どんな伝承か
昔聞いた話だという。長野県木曽郡開田村のある部落で、十人ほどの男たちが冬に備えて馬用の笹を刈るため、山奥に掘っ立て小屋を建てて泊まり込んでいた。遠方のため日帰りでは笹を運びきれず、山にこもって作業をしていたのである。ある夜、一人が用を足しに小屋の外へ出ると、麓の部落の方角が真っ赤に染まって見えた。火事だと思い、大慌てで仲間を起こして下山しかけたところ、途中で赤い光は消え、あたりは元の暗闇に戻ってしまい、方角さえ分からなくなるほどだったという。話者は畑中久松、長妻の記録による。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。