上ノ原で燃えたはずのカヤとムジナ
どんな伝承か
長野県下水内郡栄村堺の山田一義の話。昔は刺草(いらくさ)が大事にされ、丈夫なので猟師はカンジキの紐に使い、マニラロープができるまで毎年採っていた。採るのは一〇月の「山の口」と決めた日で、早く起きてみなで採りに行った。白沢の下の沢の岩の下一帯によい刺草があり、屋敷ではそこへ採りに行った。まだ朝の暗いうちに出かけると、対岸の上ノ原でカヤがボウボウ燃えていた。屋根に使うカヤを刈って立てておいたのがみな燃え、まわりに人影が見えて「大騒ぎして、みんな消しているわ」などと言いながら山へ行った。ところが夜が明けて見ると、カヤの焼けた跡もなく、カヤがあったわけでもなかった。ムジナのいたずらだろうという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。