喜助と呼ばり合って凍え死んだむじな
どんな伝承か
明治時代のこと、長野県松本市浅間温泉洞に、水汲みを生業とする喜助という男が山中に小屋を建てて独り暮らしをしていた。ある雪の夜、「喜助のほおっぺた」と呼ぶ声が聞こえてきた。むじなかたぬきの呼び合いだろうと思った喜助が「そういうやつのほおっぺた」と言い返すと、また同じ声で「喜助のほおっぺた」と返ってくる。声はだんだん近づいてきて、これに負ければ家の中に入られて食い殺されると思い、喜助は夜明け近くまで言い返し続けた。すると声は次第に小さくなり、やがて聞こえなくなった。翌朝、戸口にはむじなが一匹、凍え死んで横たわっていたという。『長野県史』民俗編に記録されている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 11 狸・むじな(松谷みよ子・現代民話考・1995年(平成7年))
『現代民話考 11 狸・むじな』は、松谷みよ子が一九九五年(平成七年)に編んだ現代民話の資料集である。明治から現代までに各地で語られた狸・むじなの話を、聞き書き、読者の回答、郷土誌や民話集、新聞記事から集める。狸火、腹つづみ、音まね、いたずら、化かし、たたり、人助け、戦争にいった狸、今の暮しなど十二の部に分け、話例ごとに本文と類話の「分布」を添え、巻頭に序文と前文、巻末にあとがきを置く。