電線に新しい靴を吊るした父親
どんな伝承か
語り手の幼いころ、山根(上野村名加山)に電報局ができた。島の人々は便利なものができたとうわさし、毎日大勢が珍しさに訪れたという。ところがどこで違えたのか、何でも簡単に送ってくれるという評判になった。ある男のもとへ、息子から靴を買う金を送れという電報が届いた。男は金を送れば何に使うか分からぬと考え、靴を買い求めて電報局のある山根へ向かった。太い電線が海へ入り込んでいるのを見て、これだと合点し、新しい靴をそのまま電線に吊るした。これで息子に届くはずだと見つめていたが動く気配はなく、そのうち届くだろうと真顔で帰っていったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。