自転車ごと中川へ飛び込んだ若者
どんな伝承か
明治三十八年頃、埼玉県三郷市の旧戸ヶ崎村でのことという。鈴木末吉は地域で最初に自転車を買った人物で、十六歳の若さで、当時セッカケ車と呼ばれていた自転車を手に入れた。当時、中川の土手は砂利道ながら一番良い道路だったが、運転はなかなか大変だった。ある日、鈴木は舵を誤って、急な土手を八メートルほど下まで走り込み、そのまま中川へ飛び込んでしまった。それ以来、彼は自転車に乗らなくなったと、生前本人から聞いた話だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。