懐で溶けた宮様下賜のバター
どんな伝承か
明治の頃、ある皇族が津山を訪れ、地元の有力者たちが拝謁した。その宮様から菓子を頂戴した者が、何かわからぬまま懐やたもとに入れて持ち帰ったところ、途中でとけてしまい礼服が台無しになった。当時の津山の人々は誰も知らなかった「バター」というものだったという。話者は父、回答者は岡山県在住の福田篤二。当時の日本ではまだ乳製品になじみが薄く、文明開化にまつわる失敗談として語り継がれている。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。