中山神社の猿神と生贄の伝え
どんな伝承か
岡山県津山市一宮の中山神社は旧国幣中社で、サルとの縁が深いことで知られる。十二世紀初めに成った『今昔物語集』巻第二十六には、この社の神の正体はサルで、年に一度未婚の娘を生贄に捧げる習わしがあったと記されている。生贄が事実かは分からないが、サルを神聖視する信仰があったのは確かだという。社の背後の山腹には今も猿神社があって参拝者が絶えず、この辺りの地名「にえんどう」は「贄堂」の意と思われ、古くは猿神に贄を捧げる儀式があった名残ではないかと著者はみる。今は「サルコ」と呼ぶ小さなサルの縫いぐるみが数多く奉納され、これも贄の変形と考えられるという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
村の奇譚 ― 里の遺風(筒井功・民俗・地誌・2018年(平成30年))
『村の奇譚 ― 里の遺風』は、民俗研究者の筒井功が平成三十年に著した民俗探訪記である。修験の里の石室、石風呂と焼き石湯、山中の贋金づくり、箕作りの集団や天幕部落、岩窟に暮らした非定住民、猿と猟師、氷室と風穴、産屋、墓制、安倍晴明の墓、狐憑きと犬神など、各地の村に残る習俗と伝承を、聞き取りと文献の両面からたどる。全十三章で、昭和三十年前後の高知市での見聞から説き起こし、「おわりに」では別の出版社で刊行が見送られた経緯を記す。