宮津から灯を運ぶと思った婆さん
どんな伝承か
京都府与謝郡伊根町の本庄地方に伝わる、電気ことはじめの話である。このあたりに電気がついたのは昭和十一年十一月であった。「婆さん、電気がつくで、日の暮れになってもランプを掃除せんでもええ、心配せんでもええ」と言うと、年寄りは「そんなもの、どこから灯りが来るのだ」と問い返す。「宮津で灯すのだ」と答えると、「お前ら、わしが年寄りだと思うてあほうにするな。宮津から灯りが来たって、本庄の方まで間に合うかいや」と、遠い宮津から電気が来るはずがないと言い張り、若い者が自分を愚弄していると思い込んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。