毎晩聞きに通った雑音だらけのラジオ
どんな伝承か
父が二年生ぐらいのころ、すなわち大正一〇年ごろに、小島文彦の家と新井伸の家が二ヶ上でいちばん早くラジオを買った。珍しがった人たちが毎晩聞かせてもらいに行った。昔のラジオは箱の上に大きなラッパが置いてあり、六畳と八畳の間がいっぱいになるほど人が聞きに来た。家の人が少しでもよく聞こえるようにとつまみを左右に回して調節してくれたが、いじればいじるほどぴーぴーがあがあと雑音が増え、言うことが分からなかった。生まれて初めてなので、これでよいのかと思っていたという。それから一〇年ほどしてラジオを買う家が少しでき、機械もよくなってよく聞こえるようになった。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
現代民話考 12 写真の怪・文明開化(松谷みよ子・現代民話考(立風書房)第十二巻・1996年(平成8年))
『現代民話考 12 写真の怪・文明開化』は、松谷みよ子が一九九六年にまとめた現代民話の資料集で、同シリーズの第十二巻にあたる。雑誌での呼びかけやアンケート、聞き書きで寄せられた話と新聞・雑誌の記事を、心霊写真をめぐる怪異と、明治以降の電信・汽車・電気燈などの新しい文物や流行病に戸惑う人々の話に分けて収める。話例ごとに本文を掲げて各地の類話を分布として並べ、話者や回答者の名と出典を添える。