六万余人の髪を植えた鬼子母神
どんな伝承か
江古田の蓮華寺の第十八世日聰上人は、大正八年四月に鬼子母神堂を建てた。このとき六万九千三百八十四人にのぼる女性の檀信徒から一人三本ずつ頭髪を集め、丈九尺の鬼子母神像の頭に植えたという。人の髪を戴いた像であることから生髪鬼子母神と崇められ、霊験がことにあらたかだとして信仰する者が踵を接し、堂には日夜読経の声が絶えなかった。同じ寺には腹の中に小さな像を納めた「お腹ごもり清正公」も安置され、天災のたびに災難調伏の祈願を受けてきた。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
城西風土記と昔語り(熊沢宗一・1959年(昭和34年))
『城西風土記と昔語り』は、東京中野の江古田に住んだ熊沢宗一が昭和三十四年に著し、自ら発行した郷土誌である。中野長者と淀橋の伝説、御犬小屋や桃園の旧跡、新井薬師、江古田の獅子舞、内藤新宿や高田馬場の昔語りなど、中野と近在の伝説・旧跡・寺社を、古文書や碑文、琵琶歌も交えて記す。全二十章の後半には著者の百姓時代や終戦直後の食糧事情、台風の被害、日露戦争の軍隊日誌を収め、巻末に著者略歴を付す。