大蛇の正体を明かした木部某の妻
どんな伝承か
『西野私記』が世俗の奇談として記す。いつの頃か、緑野郡木部村の木部某の妻が湖に身を投げて死んだ。後に木部氏が妻を慕って湖へ行くと、妻は湖の中から現れ、自分はもともと湖の主の大蛇だが故あってあなたの妻となった、帰るべき時が来たので元に戻る、慕ってはならないと告げた。木部氏が真の姿を見なければ思いは止まないと言うと、妻は身を翻して千尋の大蛇となり、天地を揺るがして湖へ入った。妻が身を投げた折、侍女も水に入って蟹になり、従者は申し開きの言葉もなく自ら剣に伏したという。湖畔の古い墓はこの従者のものと伝え、木部氏は金の宮を造って湖中に納めたともいう。木部氏創建の善導寺は今も四月八日に湖へ供物を捧げる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
群馬県史 資料編 27(群馬県史)
『群馬県史 資料編 27』は、群馬県の県史の資料編の一冊で、収めるのはその「第三章 伝説」である。伝説の定義と分類、『神道集』や近世の地誌から明治以降の郡村誌・伝説集に至る県内の調査の歩みを述べ、赤城と日光の神戦、赤堀道元の娘と木部姫の入水、文福茶釜、羊太夫、弘法伝説などを群馬の伝説の特色として論じる。続いて代表例を自然的・社会的・信仰的伝説の三つに分け、各地の口承と古記録を伝承地を添えて並べる。