蛇女が刻んだ人肌観音の左手
どんな伝承か
長谷観音にまつられる長谷観世音菩薩は、人肌観音とも呼ばれる。昔、長谷観音に泊めてもらった旅の女が、世話になったお礼に観音像を刻みたい、二十一日のあいだは決してのぞかないでほしいと言い、部屋にこもって彫りはじめた。住職の弟子は約束を守っていたが、見るなと言われればなお見たくなり、二十日目についのぞいてしまった。すると女は蛇の姿で木を削っていた。醜い姿を見られた女は自ら命を絶ち、そのとき自分の片手を切り落として、仕上がっていない観音の腕に付けていった。それが人肌観音の左手だといい、その蛇をまつったのが境内の龍蔵権現だという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
長野県史 民俗編 第4巻 3 (北信地方 ことばと伝承)(長野県史)
『長野県史 民俗編 第4巻(三)北信地方 ことばと伝承』は、長野県史の民俗編のうち北信地方の伝説の章を抜き出したものである。植物・石・水・塚・坂と峠・山・沢と道・城と屋敷・田と原・地蔵や観音・社寺・地名・禁忌の順に、条ごとに採集地を添えて短い伝えを並べる。戸隠の鬼女紅葉、黒姫と大沼池の大蛇、久米路橋の人柱、秋山郷の平家伝説など、善光寺平から奥信濃にかけての土地に結びついた話が多い。