飯綱の噂が招いた村八分
どんな伝承か
大正期に、むつ市のある村で起きた出来事である。ある家の老女が原因のわからない病にかかり、野辺地町から回ってきた、ほら貝を吹いて祈祷する名高い行者に頼むと、病はうそのように治った。その後、あの家の婆は行者から飯綱をもらったという噂が村中に広まった。病人が出ると、うわごとでその家から来たと叫ぶので、家々は夜のうちに小豆飯や銭をその家の戸口に置き、そうすると病が治るというので噂はますます信じられた。ついに寄り合いでその家は村八分とされ、見舞いに行った女まで罰金を取られた。耐えかねた主人が田名部警察署に訴えると、警察は根も葉もない噂だとして村の代表らを厳しく叱り、罰金も村八分も取り消されたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
むつ市史 民俗編(むつ市史)
『むつ市史 民俗編』の口承の章から、下北に伝わる伝説と世間話を抜き出したものである。苫生野や田名部川の口碑、蠣崎氏や落人の宝の伝え、恐山の開基と天狗・霊話、常念寺の仏、横迎町の竜神と河童、行人塚、半太窪、飯綱の噂、奥内・関根・大湊・田名部の狐の話などを収める。菅江真澄の紀行の記事を引きながら、むつ市とその周りの土地の伝えをまとめている。