船を追う海上の男の大あくび
どんな伝承か
早川孝太郎は昭和九年に鹿児島県の離島黒島へ調査に渡り、木炭運搬のポンポン船に便乗して鹿児島へ帰る途中、不思議なものを見たという。開聞岳を左手にして北上する夜十時か十一時ごろ、船尾の甲板から暗い海面を見ると、筋骨たくましい壮漢が上半身を水上に出し、立ち泳ぎのように直立していた。水を掻いていないのに船と同じ速度で同じ間隔を保ってついて来る。しばらくして大きなあくびをしたので、生きた人間ではないと気づき船室へ駆け込んだ。海坊主ではないかと語った。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。