宝川温泉の湯に浮かぶ心中した男女
どんな伝承か
上越線の湯檜曽温泉から四里あまり奥、利根川の源流にある宝川温泉での話。月のない夜、ランプを提げて広い露天風呂へ行くと、灯も持たない若い男女が湯につかっていた。色白で鼻の高い女と眼鏡の面長の男は、暗いのに顔がはっきり見え、二十分たっても口もきかず身じろぎもしない。宿に戻って女中に話すと、二年前の秋に泊まった客が山の雑木林で心中を図り、男は死に、女もその後東京で自殺した、その二人がときどき湯に現れるのだと言われたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。