カエデにまつわる青い火の球
どんな伝承か
福島県相馬郡の西寄りにある飯館村で、学校の教師をしていた男が夏の日に行水を使っていた。ふと庭に目をやると、カエデの木に青い火の球がぐるぐると巻きつくようにまつわりついている。驚いた男は、台所で水仕事をしていた妻を大声で呼んだ。出てきた妻はひと目見るなりキャーッと叫び、それきり何も手につかなくなってしまった。だいぶ離れた家から死人が出たばかりで、あれは別れを告げに来たのだろうと、あとで二人は話し合ったという。大正時代のできごとである。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。