先妻が後妻にのませようとした赤い玉
どんな伝承か
群馬県利根郡池田村の藤井は、家の後ろに山を背負ったような山根にあり、畑も田も墓も家の周りにある小ぢんまりとした所である。ここに土木業の宮田市作がいた。妻が九人の子を残して世を去り、市作はすぐに再婚したが、後妻は子供たちへの愛情が薄かった。半年ほど過ぎたある日、後妻はふとしたことから病んで息をしなくなり、一時間ほどして「ああ苦しかった」と起き上がった。先妻のおとりが来て赤い小さな玉を渡し、これを飲まねば行けぬと言うので飲もうとしたが喉につかえ、後についていくと第三の門でおとりだけ入って扉が閉まり、置き去りにされたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。