オボ桂に現れる産女の言い伝え
どんな伝承か
産女の赤ん坊を抱くときは必ず向こうむきに抱かねばならないという知識は広く行き渡っていたらしく、編者が訪ねた福島県南会津郡の檜枝岐村でも、遠い九州の島原と同じであった。普通の抱き方をすれば、化物である赤ん坊に咽喉笛をグワッと食いつかれるからタブーだという。この村でオボが出現したと伝える場所ははっきりしており、そこにはオボ桂と呼ばれる桂の木まであったが、どこの誰が何年前にオボに逢って赤子を抱かされたという話は誰の記憶にもなかった。村の男たちは腰の山刀にシッピー糸という三センチほどの下紐を付け、現れたらそれを投げつけて逃げるのだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
日本怪談集 幽霊篇(今野圓輔・今野圓輔・日本怪談集・1969年(昭和44年))
『日本怪談集 幽霊篇』は、今野圓輔が昭和四十四年に編んだ幽霊体験談の集成である。新聞・雑誌・単行本や民俗の報告、編者自身の採集から、影や物音、人魂、生霊、死の知らせ、皿屋敷、戦死者の霊、船幽霊、タクシーに乗る幽霊など、日本各地の人びとが見聞きした怪異を、作家の創作を除き原文を尊重して再録する。十章に分けて各章の頭に編者の解説と注を置き、巻末に産女や子育て幽霊を論じた「幽霊外伝」と木原浩勝の解説を付す。