コノシロで勅使を欺いた三池長者と栄尊
どんな伝承か
筑後の大善寺村の玉垂宮に伝わる縁起によれば、三池長者藤吉種継には美しい一人娘がいた。宮中に召されると聞いた種継は、娘は病死して火葬したと偽り、コノシロを焼いた臭いを嗅がせて勅使を帰した。のち鬼界ヶ島から赦されて都へ帰る平康頼が館に一夜泊まり、娘と結ばれて男の子が生まれた。頭から光を放つ子を、娘は罪人の子と言われるのを嫌って河原に捨てたが、獣が乳を与えて育てた。柳坂永勝寺の元琳和尚が霊夢に導かれて引き取り、子は七歳で法華経をそらんじ、のちの栄尊和尚となって宋に学び、郷里に朝日寺を建てたという。長者が財宝を埋めたという歌も残っている。
原典より
併し不思議にも頭から光を發するしまた刑餘の判官康頼の子と言はれるのを苦にして近いほこりの河邊へ捨てた。—— 炉辺叢書 筑紫野民譚集(及川儀右衛門・1923年(大正12年)) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
炉辺叢書 筑紫野民譚集(及川儀右衛門・1923年(大正12年))
『炉辺叢書 筑紫野民譚集』は、及川儀右衛門が筑紫野で暮らした二年ほどの間に、土地の故老や下宿の老婆から聞いた話、教え子が書き送ってきた物語を文献とも照らしてまとめた民譚集である。筑後を中心に筑前・肥前・肥後・豊前・豊後の河童、怪火、長者の話、神事と歌舞、山と水の伝奇、狐狸や幽霊の怪異を六篇に分けて収め、多くの話に古記録を引いた〔註〕を添える。序の日付は大正十二年六月である。