柩を杉の梢に吊り上げた猫の報恩
どんな伝承か
黒川郡大谷村の泉田部落に泉永寺という曹洞宗の寺があった。寛政年間、住持の玄契和尚は七十余歳の高齢で勤行と学問に励んでいたが、檀家が少なく暮らしは苦しく、ついに多年可愛がった三毛猫に暇を言い渡し、自らも寺を捨てる覚悟をした。一方、一里ほど離れた山崎郷の名主千田家の一人娘美知代は、和尚を慕って学んでいたが、望まぬ縁談を嫌い、結納の前夜に沼へ身を投げた。葬列が村境の一本杉の下を通ると、柩は十数尺の梢に吊り上げられてしまい、多くの僧や修験が修法しても効がない。迎えられた玄契和尚が数珠をもみ経を唱えると、柩は静かに降りてきた。これは愛猫三毛の報恩であったと伝わる。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
宮城県史 民俗編(茂木徳郎(「妖怪 幽霊」の章)・宮城県史シリーズ)
『宮城県史 民俗編』は宮城県の県史の民俗編で、ここに収めるのは茂木徳郎が執筆した章「妖怪 幽霊」である。山・道・木・水・海・雪・家など出現の場所による分類に沿って妖怪変化を論じ、幽霊とヒトダマ・死霊・生霊の観念を考えたうえで、県内の妖怪・幽霊・動物変化の伝承を郡・町村名を添えて集める。序説・本論・事例篇・参考の順に並び、序説では昭和二十四年の迷信調査と昭和三十年のNHK仙台中央放送局の調査にも触れる。