空襲の夜に父の臨終を見た夢
どんな伝承か
昭和二十年三月九日の夜半から十日未明にかけ、東京の江東地区は大空襲を受け、風も強く死者が多く出た。手紙の主の父もこのとき死んだ。当時、彼は学徒出陣で入隊し、見習士官として山口県柳井の船舶工兵第三連隊にいた。軍務に疲れて夢も見なかったが、三月十日の明け方、はっきりした夢を見た。コンクリートかアスファルトの通路に、黒い外套に黒い長靴の人が横たわっている。近づくとそれは父で、今わの際だった。水を含ませた白い綿で口を潤すと、父は二、三度顔を横に振って息を引き取った。四月末、父の遺体は深川の小名木川の船着場に外傷もなく打ち上げられた。黒い外套に黒いゴム長靴のまま、コンクリートの上に横たわっていたという。
原典より
戦争も終りに近づいた昭和二〇年三月九日夜半から一〇日未明にかけ、東京の江東地区はアメリカ空軍により大空襲を受け、風も強かったので、これまでになく死亡者も多かったのですが、私の父もその時死亡いたしました。—— 神秘の世界-超心理学入門(宮城音弥) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神秘の世界-超心理学入門(宮城音弥)
『神秘の世界-超心理学入門』は、心理学と精神医学を学んだ宮城音弥が著した超心理学の入門書である。遠感(ESP)、精神力で物を動かす現象(PK)、未来の予知、死後の生存を取り上げ、パイパー夫人やエウサピア・パラディーノらをめぐる欧米の実験記録に、一般から寄せられた日本の体験談を交えて、信仰にも全否定にも寄らない立場から検討する。五部から成り、霊媒の詐術を扱う「サギと真実の間」の部を含み、巻末に結び・注と引用文献・超心理学用語・索引を置く。