深夜零時に一致した念の言葉
どんな伝承か
戦争中、西丸震哉は哲学へ進んだ友人からテレパシーの実験を誘われた。西丸の家は青山、友人は三鷹で、それぞれの自宅から深夜零時より三十分間、西丸が発信、友人が受信と役割を決めた。一分ごとの升目に浮かんだ思考を書き留め、翌日突き合わせると、時間の同じ欄でぴたりと合う語句がいくつかあった。隣家の犬の名「カチ」は「カチ、カチ」と時計の音として受け取られ、「たまにはしるこをおごりたくなれ」は「やつに今度しるこでもおごってやることにしよう」と伝わっていた。「シューベルトは発疹チフスで死んだ」と送った友人は、戦後、満州で発疹チフスで死んだという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
続 山だ原始人だ幽霊だ(西丸震哉・山岳・怪異エッセイ・1972年(昭和47年))
『続 山だ原始人だ幽霊だ』は、西丸震哉が昭和四十七年に著した随筆集で、一冊の予定を前後編に分けたうちの後編である。ニューギニアやニューブリテン島の未開部族を訪ねた探訪記と原始社会の食生活論に続き、幽霊についての自説、自身や身内が出会った怪談、テレパシー・呪い殺し・雨やみの術の実験談を収める。「原始人」「幽霊」「テレパシー」の三部からなり、カバーと挿絵も著者が描いたとあとがきにある。