息を引き取った時刻に校内に立つ人影
どんな伝承か
手紙の主の息子は、昭和三十六年二月十二日、四十四歳で世を去った。旧東京美術学校、今の芸大の工芸科漆芸部を出て、復員後すぐ母校に奉職し学生係長を務めていた。責任感が強く、病床でも試験期の学生のことばかり案じ、出勤したいと言い続けていた。息を引き取ったのは十二日の夜十時半である。ちょうどその時刻、校内を巡回していた守衛が、電柱のわきに背広姿の人影を見た。泥棒かと思って駆け寄ると消え、引き返そうとして振り返るとまた立っている。人を呼ぼうと宿直室へ戻った直後に電話が鳴り、受けると息子の訃報だった。同じ頃、上司の学生課長の家では寝室の戸を叩く音がし、雨戸を開けても庭に出ても誰もいなかったという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
神秘の世界-超心理学入門(宮城音弥)
『神秘の世界-超心理学入門』は、心理学と精神医学を学んだ宮城音弥が著した超心理学の入門書である。遠感(ESP)、精神力で物を動かす現象(PK)、未来の予知、死後の生存を取り上げ、パイパー夫人やエウサピア・パラディーノらをめぐる欧米の実験記録に、一般から寄せられた日本の体験談を交えて、信仰にも全否定にも寄らない立場から検討する。五部から成り、霊媒の詐術を扱う「サギと真実の間」の部を含み、巻末に結び・注と引用文献・超心理学用語・索引を置く。