亀さんの直観的知識といたずら教育
どんな伝承か
重兵衛さんの次男の亀さんは寺田寅彦より一つ二つ年上で、何をさせても器用な子だった。彼の作る凧は弱い風でもよく揚がり、一緒に公園の茂みへ罠を仕掛けに行けば、亀さんの罠にはつぐみなどが決まってかかるのに、寅彦のものには何もかからない。学校の成績はびりに近くても、鳥や魚の世界を直観で見通す亀さんを寅彦は尊敬した。亀さんはいたずらの名人でもあり、草を結び合わせて通行人を転ばせたり、田んぼ道に小さな落とし穴を掘ったり、芋の葉で覆った灯を道端に置いて臆病者を怖がらせたりした。月夜に道へ財布を落としておき、拾おうと手を伸ばした人の前で糸を引いて財布をひとりでに動かしたこともあったという。
原典より
亀さんは鳥や魚の世界の秘密をすっかり心得ているように見えた。—— 怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦)
『怪異考 - 化物の進化』は、物理学者寺田寅彦が大正九年から昭和十二年にかけて雑誌・新聞に書いた随筆と談話を集めた本である。土佐の「孕のジャン」や濃尾のギバを地鳴りや空中放電で説く「怪異考」、昔の人が化物を自然現象の説明に用いたことを論じる「化物の進化」のほか、人魂、狸の腹鼓、厄年、夢判断などを科学者の目で語る。各篇の末尾に初出の年月と掲載誌名を記すが、「狸の腹鼓」だけは「単行本未収録」とのみ記す。