T橋の袂の腕真砂(中学時代の友人Nの創作妖怪)
どんな伝承か
中学時代の寺田寅彦の友人で、妖怪づくりに長けた禿のNが生み出した化物の一つに「T橋の袂の腕真砂」がある。城山のふもとにある橋のたもとには、人の腕が砂粒のように一面に散らばっていて、通りかかった人の裾を引きとめ、足をつかんで一歩も進ませない。これに出くわすと、たいていはその場で命を落とすという。すでに中学で学んでいた仲間たちは実在を信じてはいなかったが、Nの創作した妖怪は、日々の暮らしの向こうに計り知れない世界があるのではという思いを抱かせたと寺田は書いている。
原典より
後者は、城山の麓の橋の袂に人の腕が真砂のように一面に散布していて、通行人の裾を引き止め足をつかんで歩かせない、これに会うとたいていはその場で死ぬというのである。—— 怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦)
『怪異考 - 化物の進化』は、物理学者寺田寅彦が大正九年から昭和十二年にかけて雑誌・新聞に書いた随筆と談話を集めた本である。土佐の「孕のジャン」や濃尾のギバを地鳴りや空中放電で説く「怪異考」、昔の人が化物を自然現象の説明に用いたことを論じる「化物の進化」のほか、人魂、狸の腹鼓、厄年、夢判断などを科学者の目で語る。各篇の末尾に初出の年月と掲載誌名を記すが、「狸の腹鼓」だけは「単行本未収録」とのみ記す。