三角芝の足舐り(中学時代の友人Nの創作妖怪)
どんな伝承か
寺田寅彦の中学時代、禿のNと呼ばれる友人は、近所の曲がり角や芝地、橋のたもと、大木の梢などに、一つずつ似合いの妖怪をこしらえて配する名人だった。その一つが「三角芝の足舐り」である。川沿いのある芝地を、からっ風の吹く真夜中に通りかかると、何者かが寄ってきて不意に足をべろりと舐める。舐められた者はたちまち熱を出し、三日のうちに死ぬかもしれないという。仲間たちは誰もこれを本物とは信じていなかったが、Nの描く妖怪は若い頭に不思議な世界への憧れを吹き込んだと寺田は記している。
原典より
前者は河沿のある芝地を空風の吹く夜中に通っていると、何者かが来て不意にべろりと足を嘗める、すると急に発熱して三日のうちに死ぬかもしれないという。—— 怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦) より引用地図で位置を見る
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
怪異考 - 化物の進化(寺田寅彦)
『怪異考 - 化物の進化』は、物理学者寺田寅彦が大正九年から昭和十二年にかけて雑誌・新聞に書いた随筆と談話を集めた本である。土佐の「孕のジャン」や濃尾のギバを地鳴りや空中放電で説く「怪異考」、昔の人が化物を自然現象の説明に用いたことを論じる「化物の進化」のほか、人魂、狸の腹鼓、厄年、夢判断などを科学者の目で語る。各篇の末尾に初出の年月と掲載誌名を記すが、「狸の腹鼓」だけは「単行本未収録」とのみ記す。