膳を食い夫を追うオタカの生首
どんな伝承か
秋田県仙北郡角館に、新勝寺の捨て児で、人の世話で京市の嫁になったオタカという女がいた。夫が旅に出た留守、見知らぬ老婆が入ってきて、綯っていた縄を炉にくべ、灰を掬って食べた。翌日オタカは天井裏の葛籠に隠れ、榧の実を噛んで音を立てては老婆の足を止めたが、実が尽きると見つけられ、足首を割かれて食われ、首だけが残された。戻った夫の京市が戸棚を開けると首が袖に食いつき、宿場の旅籠油屋では膳を食い荒らした。京市が河原の蓬と菖蒲の間に隠れると首は見つけられず、家の軒に蓬と菖蒲を挿すと入れずに息絶えた。その日は五月五日で、以来この日に蓬と菖蒲を挿して魔除けとするという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。