婚礼の座に届いた祝儀の生首
どんな伝承か
文化年間のことである。水沢藩士大村祐三郎の一人娘は、同藩士北村秀二郎の次男秀雄の嫁になる筈だったが、大身の花井庄左衛門の三男松右衛門を婿に迎えることに話が変わり、北村家は一方的に破談とされた。婚礼の当日、秀雄の仲間たちが押しかけ、これはご祝儀ぞと風呂敷包みを解くと、中には自ら果てた北村秀雄の首があった。仲間は線香立と鉦を並べて通夜を営みはじめる。大村祐三郎は花嫁衣裳の娘を伴って奥座敷へ退き、しばらくして娘の生首を提げて戻り、これが祝儀のお返しだと言った。立ち去ろうとする一同の前に抜刀した松右衛門が立ちふさがり、秀雄の仲間を斬り棄てたという。
※伝承地の場所は必ずしも正確ではありません
出典の文献について
東北怪談の旅(山田野理夫・1974年(昭和49年))
『東北怪談の旅』は、山田野理夫が昭和四十九年に編んだ東北地方の怪談集である。青森・秋田・岩手・宮城・山形・福島の六県に伝わる妖怪や幽霊の話、飢饉と間引にまつわる話、江戸時代の奇談などを、一番から一六三番までの短い話として収める。各話の末尾に県名を記し、恐山や飢饉の記録にふれて東北の怪談と怨念を結びつけるまえがきと、怪談観や霊能者をめぐる回想を記したあとがきを付す。